鍼を打つ場所は?効くところ効かないところ
今回は治療中よく質問を受ける鍼はどこに打っているのか?場所は決まっているのか?ということについて解説をしていきます。
鍼治療は昔からある治療法ですがよく考えてみると不思議な治療法です。
鍼治療に使用する鍼はただの鍼。先の尖ったただの鉄です。
痛み止めが塗ってあるわけでもないですが上手くハマるとピタッとその場で痛みを解消することができます。
元はただの鉄ですから体に闇雲に打っても効きません。
数打ちゃ当たるって話っていう方もいらっしゃいますが鍼も多すぎると体が疲れてしまいます。そこでやはり正確に体の状態を把握し悪い状況を変えることができる場所を選択しなければいけません。
そして結論を言ってしまうと鍼をするのはツボ。ここ7年ほど鍼灸治療に携わりいろいろためした結果 やっぱり鍼を打つのはツボが良いという結論に至っております。
少し前までは筋膜とかトリガーポイントとか言っていましたが従来の東洋思想から作り上げられたツボという存在はとても大きいものであると改めて思うところであります。
ツボとは?
2000年以上の歴史を誇る東洋医学から生まれた物です。
一般的なツボのイメージは腰痛にいいとか肩こりに良いとかふわっとしたものになるかもしれません。しかし西洋医学が今ほど発展していなかった時代には内科的な疾患(内臓の病気)でも眼科的な疾患(目の病気)でもツボというものが治療に利用されてきました。
具体的には東洋医学的に言う血、体液、気が流れる経路がありその流れが滞ってしまうと不調が現れる。その滞りを解消してくれる場所がツボと呼ばれるものです。
このツボは経験の積み重ねが蓄積されたもので初めは病気や怪我をした際にここを押すと楽になるといった発見の積み重ねで誕生したとされています。
そのことが医学書としてまとまったのが2000年前ですから始まりはさらに前ですね。初めの頃は鍼なんてありませんから細長い石などを利用していたようです。
鍼は神経に打つの?
これはよく患者さんに質問されることです。鍼はツボに刺すと言うけれどツボと呼ばれる部分の体の構造は何があるのかって話ですよね。
もちろん神経もあります。ツボによっては太い神経の上にツボがありますから鍼を刺すとビリっとするところもあります。
有名なツボで言うと環跳(かんちょう)と呼ばれるツボ
上後腸骨稜〜大点子を結んだ線の3分の1のところにあります、
日本式環跳、中国式環跳など説はありますがここに鍼を打つと足先までビリっときます。自分自身は鍼を打ってちょっと痛いのは我慢できますがビリッとくるのは
気分的にNGなのでなるべく太い神経のツボなどはあまり使いませんが坐骨神経痛の治療の際には真っ先に針で打つポイントになります。
このように太い神経上にツボがある場合もありますがほとんどは筋肉の起始、停止と呼ばれる筋肉が骨についているところの近くだったり
筋肉と筋肉の間だったり硬結(筋肉のコリ)ができやすい場所にあることが圧倒的に多いです。
鍼治療でよく使われるツボとして承筋と言うツボがあります。
引用;医道の日本
このツボはふくらはぎの腓腹筋と呼ばれる筋肉の真ん中にあります。自分のふくらはぎを指で押してあげるとふくらはぎの表面の筋肉は左右で分かれているのがわかりますがその中心部分です。
多くの場合凝っていることが多いですが、鍼治療の場合効果としてはふくらはぎのこむら返り、坐骨神経痛、腰痛などで使われることが多いツボです。
多くのツボはこのツボのように筋肉の間つまり筋膜の重なっているところや筋肉が骨につくところの近くに存在します。
そのどちらも経験上コリができていることが多い場所です。
鍼を打って効く場所
ここから紹介するのはこれまで7年ほど鍼治療を専門に行ってきて特に効果的と感じた場所を公開していきます。これで全ての患者さんに対応できるかと聞かれるとそうでもないのですが鉄板の場所です。
実際に治療を行う際には必ず打つツボも入っていますのでどれかを利用すれば必ず何か変化は出る場所です。
腰痛編
太衝
引用;医道の日本
場所;足の親指と人差し指の間。足の第一指と第二指の骨が合わさるところのちょっと上。
効果;慢性腰痛、ぎっくり腰、坐骨神経痛など腰、足の痛みに効果絶大です。特に後屈、前屈した時の腰痛に効果的で腰痛の治療の際にはかなり利用頻度が高いツボ。
押してみて痛みがある場合はなお効果が高いことが多い。
承山
引用;医道の日本
場所;ふくらはぎの中央より若干下に存在するツボ。踵から膝の裏までスーッと指をなぞりあげていくとすっと止まる部分そこが承山と呼ばれるツボの位置です。アキレス腱と腓腹筋の移行部に存在します。
効果;慢性腰痛、坐骨神経痛、足の痛み、肩こり。などさまざまな症状に応用が効くツボと考えています。腰痛の場合特に前屈後屈させた場合に出てくる腰痛に効果的で素早い効果が期待できます。
ここは押すと十中八九痛いので押してみて痛いという指標はあまり参考になりませんが筋肉のこりができていることが多く、そのこりに鍼を当ててあげることができればより効果を出すことができます。
中殿
出典:「Travell and Simons’ Trigger Point Flip Charts」 (Janet Travell MD, David Simons著)より
場所;お尻の中臀筋とばれる筋肉の上。腰骨から指3本ほど下がったところを親指で押してみるとゴリッとしたものが触れます。これが中殿。中殿という名前はどっかの参考書で見たことがあるのでこの名前にしておきました。ツボの名前の信憑性はさておきここも腰痛に効果絶大。
効果;慢性腰痛;ぎっくり腰、坐骨神経痛、など腰や下肢の痛みに効く場所。座り仕事が多い方への利用頻度が高い運転やデスクワークによって疲労が溜まりこりができていることが多く表面は脂肪が多くあるのでちょっと深めに刺します。
刺すだけで腰の緊張がすっと取れますので刺す前と刺した後で確認するとより効果的。動きは前屈、後屈も効果的ですが右左の回旋(腰を捻る動作)が特に効果的。ここもだいたい使うツボです。
鍼を打っても効かない場所
上記でご説明した通りのツボに打てば効くというものでもないのが難しいところであって鍼灸の面白いところなのですが、もちろん自分の症状や体の状態とズレると効果が変わってきてしまいます。
例えば腰痛と一言で言っても前屈で痛い場合と後屈で痛い場合でもそれぞれツボの選択肢が変わってきます。
ですから腰痛に良いツボといっても状況によって変わってくるのです。
そして鍼を打っても効かない場所はもう一つありツボをはずしてしまうとこれまた効きません。
ツボにはお多くの場合硬結だったりくぼみなどを狙って打ちます。
そこにピンポイントに当ててあげなければなかなか思ったほど効果が出ないということが起きます。
ですから鍼治療の場合はツボの選択、そしてツボの場所の正確性が重要でそれがずれてしまうと効かないことがあります。
鍼は痛い場所に打つわけではない
鍼を打って効く場所、効かない場所解説してみましたがいかがだったでしょうか?実際揉んでみたりするとわかりますが痛いところに鍼をするわけではありません。
腰痛であっても足だったりお尻に多くの効くツボが存在しています。ですから実際の治療の際も腰だけに鍼をするということは無くむしろ足やお尻、背中のツボなどが選択肢に入ってきます。
腰痛で後ろに反るのが辛いという患者さんでもふくらはぎのツボに鍼をしてあげるだけで痛みが取れてしまうこともあります。
「え?なんで痛くないの?」
とびっくりされることもあります。
ですから腰痛の原因は腰ばかりではないということを頭に置いてセルフケアや腰痛予防に役立てていただけるとより効果が出やすいです。