突発性難聴の原因は肩こり?意外な関連と鍼灸治療の症例
突発性難聴は最近増加傾向にあるといわれている病気です。この記事では鍼灸治療による症例も含めながら突発性難聴と肩こりの関連について解説します。
目次
突発性難聴とは
突発性難聴とは急に片側の聴力が低下してしまう耳の病気です。病院で検査を行っても聴力の低下以外にこれといった異常が見られないのが特徴です。
統計として40代から60代の方が多く、男女差はありません。
突発性難聴の症状
- 聴力低下
- 耳鳴り
- 耳の詰まり感
- 音割れ
- めまい、吐き気
など聴力の低下以外にも様々な症状を引き起こします。それぞれの症状の程度は様々で夜眠れないほどの耳鳴りを感じる方もいれば、耳鳴りはないが耳の詰まり感と聴力低下を感じる方もいらっしゃいます。
突発性難聴の原因
音を感じ取って脳に伝える役割をしている有毛細胞が、なんらかの原因で傷つき、壊れてしまうことで起こります。有毛細胞に血液を送っている血管の血流障害や、ウイルス感染が原因であると考えられていますが、まだ明らかになっていません。e-ヘルスネット
このように突発性難聴の原因ははっきりわかっていませんが、有力な説は有毛細胞に血液を流す血流の障害が有力な説です。
肩こりと突発性難聴の関係
このイラストを見ていただくとわかる通り肩から首にかけ重要な動脈が走っていることが分かります。この椎骨動脈や頸動脈は人間にとって重要な頭部を栄養する血管です。
この血管の周辺に存在する肩や首の筋肉がぎゅっと硬くなると血液の流れを阻害して様々な症状を起こすのです。
代表的なものはめまいや頭痛です。めまいや頭痛は肩こりが悪化して、首の血管を締め付けて血流が悪くなってしまった結果起こるものです。
この現象が耳に近い血管で起こると音を感じる役割をしている「有毛細胞」まで血流が届きにくい状態となり新鮮な血液がもらえなくなった「有毛細胞」は傷ついて音を感じる機能が低下してしまうのです。
肩こりと自律神経の関係
肩こりは、長時間のデスクワーク、長時間のスマホ操作、ストレス、姿勢の悪さなどが原因で発生しやすい症状です。これが自律神経にどのように影響するかというと、首や肩の筋肉が緊張することで交感神経が刺激され、体の血行不良や神経の過度な興奮が生じることがあります。
自律神経のバランスが乱れると突発性難聴が引き起こされる?
自律神経の乱れが突発性難聴に関与するという仮説は、最近の研究で注目されています。自律神経の乱れが、耳の血行不良や耳の内圧の変化に繋がる可能性が指摘されています。
自律神経の乱れと自然治癒力の低下
生活習慣の乱れや肩こりがある状態が続くと自然治癒力にも影響を及ぼします。
自然治癒力は、体が内外からの刺激や損傷に対して自ら回復しようとする能力です。健康な体を維持するためにはこの自然治癒力が重要です。
一般的に自然治癒力が高ければ炎症や損傷に対して回復する速度が高いのですが、逆に自律神経の乱れによって自然治癒力が低下している状態になると軽度な炎症や損傷であっても長引いてしまいます。これは突発性難聴の要因の一つです。
突発性難聴の患者さんの肩こりには、共通する特徴的なコリがある
翳風のポイント
耳たぶの裏のくぼみここに翳風(えいふう)というツボばあります。これは鍼灸治療の際、突発性難聴やそれ以外の耳の症状でも使われる耳の症状にとってとても重要なツボです。このツボの位置は首から伸びている筋肉や肩から伸びている筋肉、そして顎関節の影響も受けるポイントです。
肩甲挙筋の付け根
肩甲挙筋(けんこうきょきん)は肩甲骨から首の骨まで伸びて先ほどの翳風というツボの付近まで伸びている筋肉です。
自分で押してみる
肩甲挙筋の付け根は自分で押すのが難しい所ですが翳風は自分で押せますね。
突発性難聴や耳に問題がある方はこのツボを両側同時にゆっくり押してみてください。
殆どの方が突発性難聴が起こっている方に痛みがあるのではないでしょうか?例えば左に突発性難聴が起こっていれば左が痛むことが多いです。
※デリケートなポイントです。押すときは優しくゆっくり押してください。
このポイントが痛むということは突発性難聴の原因として肩こりがあるという特徴の一つです。もちろん難聴が起こり耳周辺が繊細になっているだけで痛む場合もありますから鍼灸治療を行う際はそれ以外のツボや筋肉の緊張を確認し施術を行います。
肩こりが酷い方と突発性難聴の起こる方はほぼ一致する
突発性難聴でうちにいらっしゃる患者さんに初めに必ず聞く質問があります。
「肩こりありますか?」
自分で自覚がある方は「あります」とおっしゃいますし自覚がない方は「感じてないです」といいます。
肩こりの自覚がある方に「コリが強いのは右左どちらですか?」と尋ねるとほぼ100%突発性難聴を起こした方と同じ側が辛いとおっしゃいます。
もちろん左右50%の確率なのでこれだけで肩こりが難聴の原因と言っているわけではないのですが肩こりが辛い方と突発性難聴が起こる側というのはほぼ一致します。「左右の差はあまりない」とおっしゃる方もいらっしゃいますが触ってみると突発性難聴が起こっている側のコリが強いことが多いです。
元から酷い首コリ、肩こりがあり突発性難聴を発症してしまったケース
症状
40代女性 事務職
約一か月前に耳が聞こえにくくなった。耳鼻科に行き検査を受けて聴力が少し下がっていた程度で2,3日後来てくださいと言われた。
翌日朝起きると左側の耳はほとんど聞こえなくなっていたため再び耳鼻科を受診。突発性難聴と診断された。
もとから左側の方から肩こりを強く感じており左側が強いような気がしていた。2週間ほど薬を飲んだところ聴力は少し戻ったがまだ会話が聞きにくいときがあり完全には戻っていない。突発性難聴を発症後から耳鳴りも続いている。
施術と経過
肩や首に触れると先ほどの翳風のポイントと肩甲挙筋の付け根に反応が見られた。
他にも首の前の筋肉、胸鎖乳突筋も硬く緊張している。この胸鎖乳突筋も、こると肩こり、首コリ、耳の異常を起こしやすい筋肉です。
肩こり、首コリを緩めるため、背中のツボ、首の付け根のツボに鍼をした。ツボに鍼をすると先ほどの硬さは緩んだ。
次に胸鎖乳突筋を緩めるため合谷の骨はがしの手技を行った。胸鎖乳突筋の硬さも緩んだため初回は終了。
肩こりが抜けて体が楽になったとのことだった。
2回目
初回と同様の施術を行う。耳鳴りが何となく楽になったとのこと。
3回目
テレビの音が聞こえやすくなったとのこと。同様の施術を続ける
5回目
耳鼻科に行ったところ聴力はほとんど元に戻っていた。首コリはマシになったが肩がまだ気になる。耳鳴りもまだあり。
9回目
忙しい日が続くと現れるが耳鳴りはほぼ感じなくなった。肩こりの感じも初めよりましになったとのことで施術を終了した。
まとめ
この例でも首コリや肩こりがあり共通するポイントに強いコリが見られた。
このコリに直接はりをすることでも緊張はとれるが少し離れた背中や手のツボから狙うと効果が持続しやすい。
突発性難聴のポイントが緩んだ状態が続いたため血流が改善し音を感じる細胞に血液がいきわたり聴力が回復したと考えられる。
頭痛と肩こりと突発性難聴
症状
元から頭痛と肩こりがあった。2週間前急にめまいのような感覚があり耳から急に「ファー」や「ゴー」とい音が出るようになった。
翌日耳鼻科へ行くと突発性難聴と言われた。10日ほど薬を飲んだが症状は改善せず中程度の難聴と朝からお昼ぐらいまでの耳鳴りが続いている。さらに突発性難聴を発症してから頭痛や肩こりが酷くなった。元から月に一回数日ほど頭痛と肩こりを感じる日があったが難聴を発症してからはそれが続いている。
頭痛は以前レントゲンを撮ってもらったところストレートネックと言われた。
施術と経過
お体をチェックするとこの方も耳の症状が出ている左側に強いコリが見られた。本人の自覚としては同じくらいと思っている。
しかし凝りやすいポイントを軽く押すと左側に痛みが出現。本人もここで左が凝っていたのかと自覚された。
頭痛もあるとのことから首の緊張も緩めるため手のツボ、首のツボ、背中のツボに鍼を行った。施術前に感じていた頭痛が何となく軽減したとのこと。
2回目
朝の耳鳴りは続いているが肩こりは少し楽になりここ数日は頭痛薬を飲まずに済んでいる。しかし完全に取れたわけではないとのこと。
初回の同様の施術を行う。
3回目
耳鼻科での聴力検査の結果。聴力はほぼ改善していた。頭痛は消えたが、耳鳴りは日によってまちまち。昨日は遠出して体に負担がかかったためか夕方から耳鳴りが現れた。
6回目
朝の耳鳴りはほぼしなくなり肩こりの感じも前より良くなった。頭痛と耳の症状が無くなり調子がいいとのことから施術を終了した。
まとめ
肩こりに加え頭痛も感じていた症例。発症して一カ月も経っていないタイミングのおかげか聴力の改善も耳鳴りの改善も早く変化を感じていただけた。
突発性難聴後から頭痛が起こるパターンもありますが突発性難聴が起こる前から頭痛があると難聴が起こったストレスや違和感から、さらに頭痛が酷くなってしまうケースが多いです。今回の場合は極度に緊張が強かった方のコリを緩めることで頭痛と難聴も改善に向かった。
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