逆流性食道炎と自律神経の関係:治すために重要な3つのポイント
目次
逆流性食道炎(GERD)とは
逆流性食道炎(GERD)は、胃酸や消化液が胃から食道に逆流する状態を指します。通常、食道は胃酸から保護されていますが、胃酸の逆流が頻繁に起こると食道が刺激され、炎症を引き起こす可能性があります。この炎症が続くと、逆流性食道炎が発症します。
逆流性食道炎の症状
逆流性食道炎の症状は個人差がありますが、一般的な症状には以下が含まれます:
- 胸焼け: 胸の中央あたりで感じる灼熱感や不快感。
- 逆流:胃酸の逆流を起こし酸っぱいものが上がってくる
- 咳や声のかすれ: 胃酸が喉に到達することで引き起こされる。
- 慢性的な咳: 寝ている時に胃酸が喉を刺激し咳が起こります。
逆流性食道炎はどんな人がなりやすいのか?
逆流性食道炎の原因は様々ありますが以下の方が発症しやすいと言えます。
- 食道括約筋の弱さ: 食道と胃を仕切る括約筋が弱くなり、逆流を許すようになる。
- 脂肪やカフェインの摂取: 高脂肪食やカフェインは胃酸分泌を増加させ、逆流を促進する可能性がある。
- 肥満: 余分な脂肪が腹圧を増し、逆流のリスクを高める。
- 喫煙: タバコの成分が括約筋の機能を損ない、逆流を招く可能性があります。
- 過度なストレス:過度なストレスは自律神経の乱れの原因となり胃酸過多など引き起こします。
自律神経の役割
自律神経は全身の血流、器官すべてをコントロールしている神経です。よく「自律神経の乱れ」というキーワードを目にしたり聞いたりしますが自律神経は全身に影響を及ぼす神経ですからとても影響が大きいわけです。
自律神経系の概要
自律神経は自分でコントロールできない部分全てをコントロールしてくれている神経です。
例えば心臓も自分の意思で働きを強めたり止めたりはできませんよね?心臓やその他内臓はすべて自律神経がコントロールしてくれている器官です。
自律神経は主に交感神経と副交感神経と別れ体をコントロールしています。交感神経は主に日中に働きを強め「活動モード」にしてくれる神経です。副交感神経は夕方から夜にかけ働きを強め「リラックスモード」にしてくれる神経です。
夜になっても昼間のように交感神経がバチバチ働き活動的になっていたら人間は休めませんから夜は副交感神経が働きを強め体の緊張を緩め睡眠に入りやすい状態を作ります。
自律神経の乱れが起きるとどうなる?
自律神経が乱れると交感神経、副交感神経どちらかが働きすぎてしまい、不調をきたしている状態になります。
夜になって体が落ち着かず眠れない。日中なのに眠くてだるい。といった症状が起こるようになります。
例えば夜になっても体が落ち着かず寝付けないという状況は簡単に言うと夜なのに交感神経が働きすぎてしまい。副交感神経が体をリラックスモードに切り替えられない状態です。これはただの一例ですが自律神経は全身をコントロールしている神経ですから様々な症状を起こします。
逆流性食道炎を起こす「胃」と自律神経の関係
自律神経の影響を強く受ける「胃」は交感神経が働くと胃の血管は収縮し血流量が減ります。すると胃の運動や胃酸の分泌は減少します。
逆に「胃」副交感神経が働くと内臓の血管は拡張し胃への血流量は増えます。すると胃の運動や胃酸の分泌は増加します。
このように交感神経と副交感神経のバランス調整がうまくできると問題がない胃ですがバランスが崩れるとこうはいきません。
良くある症状として
交感神経が過剰に働くと・・・胃の過緊張による胃痛。胃の活動低下による消化不良、食欲低下。
副交感神経が過剰に働くと・・・胃の活発化による胃酸過多。胃酸過多による逆流、慢性的な咳。食道の炎症。
交感神経、副交感神経が働きすぎるとこのような症状が起こります。
通常の健康な状態であればここまで過度な働きにならないように自律神経がバランスをとってコントロールしますが自律神経の乱れが起こると振れ幅が大きくなります。交感神経が働きすぎている状態の場合、副交感神経もバランスをとるため働きを強めます。すると交感神経の働きは弱くなるのですが、今度は副交感神経が過剰の状態に触れます。
この自律神経の切り替わりがうまくいかないことで胃へのダメージが蓄積され逆流性食道炎や胃炎などを起こすようになります。
自律神経の影響が強い逆流性食道炎を治す方法は?
- 病院など医療機関で治療を受ける
- 生活習慣の改善、セルフケア
- 自律神経症状が得意な鍼灸を受ける
病院で行われるお薬の治療
基本的には薬物療法が行われ症状の改善が見られない場合には外科的手術が行われます。逆流性食道炎は胃酸の分泌を抑えるいいお薬がありますが生活習慣の改善も同時に行う必要があります。お薬を中断すると再発する可能性が高く長期的にお薬を飲まなければなりません。
- プロトンポンプ阻害薬(PPI): 胃酸の分泌を抑制し、食道の炎症を軽減します。例えば、オメプラゾールやランソプラゾールなどが一般的に処方されます。
- H2ブロッカー: 胃の酸の分泌を抑制するために使用されます。代表的なものには、ファモチジンやランイチジンがあります。
外科的治療
薬物療法を行っても効果的でない場合、アレルギーなどで薬が飲めない場合、手術が検討される場合もあります。
手術はお腹に内視鏡を入れ逆流を防ぐため胃を食道に巻き付け胃と食道の結合を強化するものです。
自律神経症状が得意な鍼灸を受ける
自律神経症状の改善が得意な鍼灸院であれば胃腸症状の改善は得意です。当院でも胃腸症状の患者様は多く逆流性食道炎や過敏性腸症候群でお悩みの方がご来院されます。
鍼治療は胃と食道の間に存在する食道括約筋の緊張を緩め働きを向上させることを目的としています。さらに自律神経を整える鍼を行うことで胃の過活動や胃酸過多を抑える効果も期待できます。
逆流性食道炎と自律神経を整える漢方
- 半夏瀉心湯:ストレスや自律神経の乱れからくる胃腸症状、吐き気、下痢に使えます。みぞおちの張りやつかえがある時に効果的です。
- 六君子湯:逆流性食道炎、胃炎、消化不良、みぞおちの疲れなどで使用される漢方薬です。胃腸の働きを高めてくれるため、胃腸が弱く食欲がわかない場合に適します。
- 半夏厚朴湯:喉や胸のつまり、違和感があるときに使用されます。ストレスや自律神経の乱れからくる不安神経症、神経性胃炎、せき、喉の違和感に効果が期待できます。
- 止逆清和錠:胆汁分泌を促進させて消化を助けてくれる。食べ過ぎ、飲み過ぎによる、胃酸過多、ゲップ、吐き気などに使用されます。
ストレスや自律神経の乱れからくる神経性胃炎や逆流性食道炎には半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)。胃腸が弱く食欲がわかない場合六君子湯(りっくんしとう)。逆流性食道炎で自律神経の乱れやストレスからくる胃腸炎でお悩みならこれらの漢方がおすすめです。
自律神経の影響が強い逆流性食道炎を治す3つのポイント
- 早食いをやめる
- 生活習慣の改善
- 食事の改善
早食いをやめる
逆流性食道炎に悩む方の中には食事の時間が短く「早食い」の方がいらっしゃいます。自分の食事のスピードが速いのか遅いのか思い返してみてください。もし早いなと思うのであればしっかり噛んで食事を取るようにしてください。それだけでも胃の症状が変わります。具体的な目安ですが一口20回は噛むようにしてください。しっかり噛むと食べ物が細かくなるだけでなく唾液とよく絡まります。唾液は一種の消化酵素で食べ物を胃で消化しやすい形にしてくれます。
しかししっかり噛まずに飲み込んでしまうと食べ物が唾液と絡まないまま胃に送られるので消化に時間がかかるようになります。さらに食べ物が大きなまま胃に運ばれて行きますから胃酸の分泌も増加し逆流を起こしやすい状態を作ってしまうのです。
生活習慣の改善
逆流性食道炎と自律神経を整えるうえで最も大切な生活習慣の改善ポイントは就寝前の食事を避けること。ストレスを溜めない。
夕食は遅くとも3時間前までに済ませましょう。仕事を遅くまでして帰宅後夕食の時間そして就寝ということが続くと消化不良が起こり逆流性食道炎を悪化させる要因になります。食後の体は食べたものを消化しようと消化器に血液を送り込みます。そして消化器を活発に動かし消化を行いますがそこで寝てしまうと全身の血流量が減りますから消化器はうまく動けず消化不良を起こします。
消化しやすい状態を作るためしっかり食休みをとり睡眠まで3時間は開けるようにしましょう。どうしても仕事が遅くなりそうな場合は消化の良い簡単なもので済ませる。もしくは仕事を一旦切り上げ早めに食事を取ってしまいましょう。
ストレスを避けることも重要な要素です。ストレスを溜め続けると交感神経が興奮した状態が続きやすくなり、不眠や胃腸の働きが低下して胃痛、消化不良などを起こしやすくなります。自律神経の乱れは逆流性食道炎を悪化させる可能性が高いのです。ストレスを避けるにはしっかり睡眠をとる、軽い運動をする、好きなことをするなどがおすすめです。
食事の改善
食生活の改善も重要な要素です。甘さの強いもの、脂肪が多いものは避けましょう。
甘さの強いものや脂肪が多いものは胃での消化に時間と労力がかかります。その分胃酸が多く分泌されたり胃が活発に動かなくてはいけなくなるため炎症を起こしやすくする要因となります。
お肉などのタンパク質は体を構成するうえでとても大事な栄養素です。日本人は元からたんぱく質の摂取量が少ないと言われています。たんぱく質の摂取が少ないと感じたらお肉や大豆食品などから摂取しましょう。お肉は脂肪分が少ないものであれば胃もたれを起こしにくいです。
参考
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